視点 ・ 論点
新防衛計画の大綱要旨(22.12.21)
平成23年度以降に係る防衛計画の大綱
Ⅰ 策定の趣旨
我が国を取り巻く新たな安全保障環境の下、 今後の我が国の安全保障及び防衛力の在り方について、 新たな指針を示す。
Ⅱ 我が国の安全保障における基本戦略
(1) 安全保障の目標は、 ①脅威の防止と排除、 ②脅威発生の予防、 ③世界の平和と
安定及び人間の安全保障の確保。
(2) 目標達成のため、「我が国自身の努力(IV-1)」、「同盟国との協力(IV-2)」、
「国際社会における多層的な安全保障協力(ⅠV-3)」を統合的に推進。
(3) 専守防衛、 非核三原則」等の防衛の基本方針は引き続き堅持。
(4) 国際平和協力活動への積極的取組。
(5) 核兵器の脅威に対しては、 核軍縮・不拡散に取り組むと同時に、 核抑止力を中
心とする米国の拡大抑止の信頼性を維持 ・ 強化。
Ⅲ 我が国を取り巻く安全保障環境
(1) 武力紛争には至らないようなグレーゾーンの紛争が増加。
(2) 新興国の台頭と米国の相対的な影響力変化によるパワーバランスの変化。
(3) 国際テロ、 海賊等に加え、 サイバ一空間をめぐる問題等がグローバルな安全保
障課題に。
(4)北朝鮮の核・ミサイル問題等は、地域の喫緊かつ重大な不安定要因。
(5) 中国の軍事力近代イヒや透明性の不足等は、地域・国際社会の懸念事項。
(6) ロシアの軍事活動は引き続き活発化の傾向。 .
(7) 我が国の存立を脅かすような本格的な侵略事態が生起する可能性は低いものの、
安全保障課題や不安定要因は、 多様で複雑かつ重層化。
Ⅳ 我が国の安全保障の基本方針
1我が国.自身の努力
(1) 平素から国として総力を挙げたシームレスな取組。
(2) 情報収集・分析能力、情報保全体制の強化。
(3) 迅速・的確な意思決定による政府一体としての対応。
(4) 安全保障に関し内閣の組織・機能・体制等を検証した上で、首相官邸に関係閣
僚間の政策調整と総理への助言等を行う組織を設置。
(5) 国際平和協力活動へのより効率的・効果的な対応。活動の実態を踏まえ、PK0
参加五原則等参加の在り方を検討。
(6) 防衛力の存在自体による抑止効果を重視した 「基盤的防衛力構想」 によることなく、 「動的防衛力」を構築。
1
(7)動的防衛力は、防衛力の適時・適切な運用等により抑止力の信頼性を高めるとともに、 国際平和協力活動等の多様な役割をも能動的に果たし得るもの。
2 同盟国との協力
(1) 我が国の平和と安全の確保のために日米同盟は不可欠。
(2)日米同盟の深化・発展のため、戦略的な対話等に継続的に取組。
(3) 従来の協力分野に加え、サイバ一空間における対応等新たな協力を推進。
(4) 米軍の抑止力を維持しつつ、 地元の負担を軽減。
_3 国際社会における 多層な安全保障協力
(1) アジア太平洋地域における二国間・多国間の安全保障協力のネットワーク化。
(2) 韓国・豪州、ASEAN諸国、インド等との安全保障協力を強化。
(3) 中国、ロシアとの信頼・協力関係の強化。・
(4) グローバルな安全保障課題に関し、 EU、 NATO、 欧州諸国とも協力関係を強化。
Ⅴ 防衛力の在り方
1 防衛力の_役割
(1)実効的な抑止及び対処(周辺海空域の安全確保、島嶼部攻撃への対応等)。
(2). アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化。
(3) グローバルな安全保障環境の改善。
2 _自衛隊の態勢
防衛力の役割を実効的に果たすため、 即応態勢、 統合運用態勢等を強化。
3_自衛前本制
(1) 冷戰型の装備・編成を縮減。南西地域も含めた防衛態勢の充実。
(2) 各自衛隊に係る予算配分の思い切った見直し。 ・
(3) 本格的な侵略事態への備えは、 最小限の専門的知見や技能維持の範囲で保持。 (4) 統合の強化、 島嶼部対応能力の強化、 国際平和協力活動対応能力の強化等。
(5)陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊の体制(編成、装備、配置)。
Ⅵ 防衛力の能力発揮のための基盤
(1) 人的資源の効果的活用。 階級・年齢構成の在り方の見直し等の人事制度改革
(2) 契約制度や調達方式の改善による装備品取得の一層の効率化。
(3)防衛生産・技術基盤の維持・育成のため、中長期的な戰略を策定。
(4) 防衛装備品を巡る国際的な環境変化に対応するための方策について検討。
Ⅶ 留意事項
大綱に定める防衛力の在り方はおおむね10年後までを念頭。情勢に重要な変化が生じた場合には、 検討を行い、 必要な修正を実施。
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目の前の朝鮮事態に備えているか(冨澤 暉)
東洋学園大学客員教授 冨澤 暉
現在の朝鮮問題が熱戦や治安事態に変化するのか、あるいはまた延々とした6カ国協議に戻るのか、について断言できる人は少ない。また仮に6カ国協議に戻るとしても、早晩、熱戦・治安事態の危機が再発生することも明白である。
この事態を前に日本が今、早急に、準備をすべきことは何であろうか。
熱戦・治安事態が生起した場合、中国がどういう立場をとるかが最大の鍵であるが、米中両国はともにそれを望んでいないので、米中戦争に発展させることは避けられると期待する。
いずれにせよ朝鮮戦争は休戦中であり、休戦が破られたとなれば、米韓両軍はもとより、休戦時にニューヨークで再結集を約束した朝鮮国連軍参加各国の多くがこの収拾のために参戦することになろう。
日本はこの朝鮮国連軍参加各国との間に「国連軍地位協定」(1954年)を締結しており、在日米軍基地のうち7カ所を国連軍用基地として指定している。
日本政府は1999年に「周辺事態法」を制定した。これは朝鮮半島で熱戦・治安事態が生起した場合、米軍を支援するにあたり「米軍地位協定」のみでは不十分、という認識のもとに策定されたものである。日本がこの事態に国連軍を支援する必要があるのなら、まずは、現「周辺事態法」の中に「国連軍支援」を明文化する必要がある。
更に、未だ「国連軍地位協定」に参加していない韓国との間で本協定の調印・締結がなされなければならない。特に治安事態になった場合、韓国内にある米韓両軍基地は脆弱となるので、米韓両軍を含む国連軍にとって日本の基地は極めて重要になる。
この基地提供のみならず、これら国連軍に日本の港湾・空港等を提供し、また様々な援助を与えることが、直接参戦できない日本にとって何よりも重要となる。その援助の多くは情報・後方兵站を含む軍事援助なので、陸・海・空自衛隊が中心となって支援しなければならない。現在、日・米・韓プラス豪等の連携が叫ばれているが、これらの援助がしっかり出来るように準備することでその連携が現実のものとなる。
日本の自衛隊がその国連軍に参加して、韓半島に戦力を及ぼしてはどうか、という意見もあろうが、それは出来ない。北朝鮮の人も韓国の人も、日本の戦力が韓半島に及ぶことには、極めて敏感であり、その結果は熱戦・治安事態の終了後に、より悪い結果を招くからである。
邦人救出も、現状では極めて難しい。前述の問題をも含み、戦争で忙しい韓国の空港・港湾を一部とは言え日本が優先使用することは困難だからである。ここは、米・韓・国連軍と予め緊密に調整し外交的に準備しなければならない。
第一次朝鮮戦争において、日本への難民流出はあまりなかったと言われる。しかし、今回は多数の難民が出現すると思われる。かつて、遠いベトナムからですら日本に難民がたどり着いたのである。特に韓国からの難民は多いだろうし、そこに北朝鮮系の人々が相当数含まれることも予測される。難民は入国管理局の担当だろうが、何万・何十万ともなる難民を日本はどう受け入れるつもりなのだろうか、まさか、戦時の韓半島に送り返すこともできまい。この人達への対応が悪ければ暴動が起きるかも知れない。収容施設・給食・採暖等生活環境の支援、更には暴動抑止のために警察・自衛隊は何が出来るのだろうか、その準備が既に出来ている、とは寡聞にして聞かない。
日本が米・韓・国連軍に基地を提供し各種支援をすれば、これに対する北朝鮮からの妨害行動が予測される。
北朝鮮のミサイル攻撃に対してはミサイル防衛と敵基地攻撃しかない。ミサイル防衛は、その全てを東京に集中すれば東京周辺だけは何とか守れるかもしれない。しかし現段階では、技術的・数量的限界からして日本全土を守ることは出来ない。敵基地攻撃は現在の自衛隊では技術的に実行できないので、これは米韓軍に依存するしかない。北朝鮮も滅多なことではミサイルを人口密集地に打ち込んでこないと思われるが、後は急遽、シェルター(防空壕)を掘り、地下街に空気清浄機をつけ、国民保護訓練を盛んにするしか対応策はない。
こうした事態において、一番の問題は日本国内においてテロ・ゲリラが発生することである。北朝鮮には9万人の特殊部隊がおり、また韓国・日本内部にもこれに通じる人々が
いる、と言われている。日本には電源・水源・通信・交通機関に脆弱な施設等が多く、テロ・ゲリラにそれらを狙われたら日本人の生活は危殆に瀕する。
1996年、韓国東部に26人のゲリラが上陸した時、韓国軍は6万人の兵士を何十日間も投入したという。日本各地でこういう事態がいくつも同時に発生した時、担当の警察は対応できるのであろうか、また、自衛隊はどうするのであろうか。シナリオに基づく具体的な回答を政府から聞いた人はいない。
防衛大綱で5年から10年後に備えることは無論大事であるが、このような目の前のことを確認し、直ちに実行することが今何よりも大事ではないか。
領域警備法を早急に制定せよ(冨澤 暉)
9月7日の巡視船・中国漁船衝突は尖閣諸島・久場島沖西北12~15キロで起きたものである。久場島沖22キロまでは日本の領海だからこれは明白な領海侵犯事案と言えるのだが日本ではそれを取り締まる法律がない。今回は漁業法違反の疑いで取り調べようとして追尾したところで衝突され、公務執行妨害で船長を逮捕したという。
国際法(82年国連海洋法条約)では、軍艦を除くあらゆる外国船に沿岸領域内での無害通航権を認めているのだが、その場合でも「沿岸国の平和、秩序または安全を害しないかぎり」との条件が付されており、沿岸国では無害でない通航を防止するためにその領海内で必要な措置をとることができる、とされている。つまり領海侵犯を防止するための法律をつくることは可能なのに日本はそれをしていない、ということである。
さて、中国・台湾は尖閣諸島を自国の領土と主張しているが、今回、この現場には日本の巡視船が存在するのみで、中国・台湾の官憲は何も存在しなかった。ということは、両国とも尖閣諸島における日本の実効支配(既成事実)を暗黙の内に認めていた、と言わざるを得ない。それは日本の巡視船が竹島や北方領土の、韓・露の主張する領海内に入らないことと同じである。
しかして、こうしたことが何回か続いた後に、中国や台湾が武力を行使して尖閣諸島を奪取するかどうかが問題になる。
既成事実(実効支配)を持つ國に対してそれを持たない國が武力攻撃をして領土を奪取することは、第三者的に見て明らかな侵略である。この事態が生起したとき、日本は断固として戦わなければならない。もし、日本自身が戦わなければ国連も米国も多分動かないであろう。米軍には日本の領土を自衛隊に先んじて守る責務はない。日中の紛争が戦争に発展して互いにその基地を叩き合う事態になった時に、はじめて米軍は日本を支援して参戦できる。
従って、日本が断固として戦う姿勢を示し、沖縄と佐世保・横須賀の米軍基地がある限りにおいて、中国が武力攻撃をかけてくることは(絶対にないとは言えないが)先ずない。中国には、今のところ米国と戦争をする能力も意志もないからである。
もっとも警戒すべき事態は、中国が非武装(風)の民衆を上陸させ、そこに彼らの生活圏を作り上げてしまうことである。これを「軍隊による侵略と同じだ」とは言えないし、この民衆を攻撃・撃滅して「これは日本の自衛行為だ」とも言いにくい。そしてこの民衆を保護する名目で中国の官憲が出現し居すわった場合に、既成事実(実効支配)は完全に逆転する。南シナ海の幾つもの島を中国はこのようにして奪取してきたのだ。尖閣諸島に対するこの種試みは既に何回か行われているが、今後の問題は、雲霞の如き船と民衆が上陸しようとやってくることである。この時、「撃たれなければ撃てない」海上保安庁や自衛隊ではとても対応できないのである。
警告をし、警告射撃をし、それでも領海に入ってくる船は即座に撃沈することが必要である。そうでないと警告が警告にならないのである。撃沈することは武力行使であるが、その武力行使を許す領域警備法を国際法に基づいて制定しなければならない。そうしないと、日本はすべての離島とそれに伴う領海・排他的水域を失うことになるであろう。
領域警備法を制定するのに、憲法改正は不要であるが、どうしても武力行使という言葉を使いたくなければ「領域警備のための武器使用」とすればよい。それは治安行動における「警護鎮圧のための武器使用」(自衛隊法第90条)と同等に扱うということである。
尖閣、日本の取るべき道は(ジェームス・アワー)
産経・正論(9.23)から
■菅さん、日本の脆弱性認識せよ
「民主党の安全保障政策についてどう思うか」。昨年8月の総選挙で民主党が圧勝して政権に就く前後、日本の記者たちから最もよく聞かれた質問である。
むろん、私は民主党の「マニフェスト」(政権公約)を読んではいた。だが、全体として国の安全保障をめぐる民主党内の見解の相違幅は極めて広く、自民党内のそれより大きいと思った。だから、「民主党とは一体、何なのか」としか返答できなかった。
9月14日の民主党代表選の数時間後に、代表選とその日米同盟への影響について、米国の首都ワシントンにあるヘリテージ財団が主催したシンポジウムで、(パネリストのひとりとして出席した)私は、「もっと現実的で断固たる防衛政策を支持する若く『希望が持てる人物たち』は民主党のどこにいるのか」と問われた。
私は、希望が持てる人物たちは実在し、例えば、改造前の菅内閣の防衛省一部首脳たちは、日本の国家安全保障と同時に米国との同盟協力に何が必要なのか、非常によく分かっていると答えた。
◆北のミサイルと攻撃的な中国
対米同盟協力は、北朝鮮からのミサイル攻撃とともに、ますます無謀で攻撃的になっている中国の振る舞いに対して、日本を脆弱(ぜいじゃく)なものにしているその地理的な状況を考慮すれば、抑止のためには絶対に不可欠である、と。
これら民主党の希望が持てる人物たちは、現在、沖縄の普天間飛行場に配置されている米第7艦隊指揮下のヘリコプター部隊を北部の既存の米軍基地(キャンプ・シュワブ)に移転させることしか眼中にないわけではない。
そうした決定は、ヘリ部隊が名護市内の地理的に遠隔な部分(市の東部)に移ったとしても、騒音や環境被害の影響を何ら受けることのない選挙区民を抱えている地元議員の多数から成る市議会よりも、むしろ、日本国政府によって行われる必要がある。名護市の東部に住む人たちの大半は、ヘリ部隊がキャンプ・シュワブ内にある隣接の海域に移ってくることには賛成しているのである。
◆米国と自衛力の集団的行使を
民主党の若く、希望が持てる人物たちは、普天間移設にのみ専心するのではなく、自衛隊が日本の国益を守るために武力を行使する権利や、そうすることが日本の利益にかなうときには、自衛力を米国とともに集団的に行使する権利といったような、はるかに重要な問題をはっきりさせ、すっきりさせたいと思っているのである。
鳩山前首相や菅現首相が、沖縄の住民感情に神経質になっているのは疑うべくもない。こうした感情はしかし、往々にして、日本のメディアと、米国をはじめとする一部の海外メディアによって、誤って伝えられたり、センセーショナルに描かれたりする。
理想的な世界においては、飛行場の近くに住んだり、不必要な軍事力を行使したりしたいと願う者はまずいない。しかしながら、われわれは理想的な世界に住んでいるわけではない。日本でも米国でも、スイスのような中立国においてさえも、国内的、国際的輸送のための一定の空港や、国の安全保障をもたらしてくれる一定の軍事基地は必要なのである。
もし、羽田空港の近くに住む日本人や、サンディエゴ空港のそばに住むアメリカ人が、空港はどこか他の場所に位置している方が良いかと尋ねられれば、多数はまず間違いなく、そうだ、と言うだろう。だが、そのような質問は現実的ではないし、羽田の近辺やサンディエゴ市に住む人たちは、飛行場周辺に居住するという現実にもかかわらず、そこに住むことを選択しているのである。
◆希望持てる若手の登用が重要
名護市民の多数は市の西側の部分に住んでいて、(市の東部に位置している)キャンプ・シュワブに飛来してくるヘリコプター(次世代兵員輸送機、MV-22オスプレー)一機の音を聞くことも、一機の姿を見ることもないのだということを意味する同市の地理を、日本本土や沖縄の日本人たちの多数が分かっているのか。
そして、名護市東部に住んでいて、多少の迷惑をこうむるかもしれない少数の市民のうちの大多数がその負担を受け入れるのもいとわないということを、日本人の多数が分かっているのか。
菅首相がそうした現実を承知したうえで、沖縄の枢要な当局者たちや名護市東部住民たちの理解と支持を求めるのであれば、鳩山氏が失敗したところで成功することができるかもしれない。
だが、それよりも重要なことがある。菅首相は、民主党の希望が持てる若き人物たちに耳を傾けて力を与えれば、国内的にも米国との協力体制においても、非攻撃的ながら現実的な「普通の」国の防衛態勢を採用し、追求することができるという点である。
北朝鮮や中国に対する日本の地理的な脆弱性が、そうした政策をぜひとも必要としており、名護市東部の地理的な状況と、辺野古、豊原、久志という名護市東部各地区の住民たちの愛国心が、その政策を容認してくれよう。
中国の軍事力増強 目をそらさず戦略を語れ
(産経N 22.7.6)
日本の国益を左右する重大な問題が参院選で置き去りにされている。軍拡を続ける中国に対する外交戦略である。
中国の国防費は21年連続で2ケタの増強を続け、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所によると、2009年は1000億ドルと米国の6610億ドルに次ぐ世界2位となった。6位の日本(510億ドル)の2倍、しかも、その内訳は不明だ。
景気対策や社会保障などの論戦を深めるのは当たり前だが、日本の安全保障に直結する中国の軍事力から目をそらすことはできない。対中姿勢は日本の国のあり方とも直結しており、国政選挙で問うべき課題だ。各党は対中戦略をもっと語るべきである。
とくに中国海軍の最近の動きは目に余る。参院選公示後の今月3日、中国海軍のミサイル駆逐艦とフリゲート艦の計2隻が沖縄本島西南西の公海上を東シナ海から太平洋に向け航行した。今年4月には同じ海域を潜水艦を含む計10隻が通過し、警戒・監視にあたった海自護衛艦に中国海軍の艦載ヘリコプターが異常接近している。
各党のマニフェスト(公約)の中では、民主党が唯一「中国の国防政策の透明性を求めつつ、防衛交流など信頼関係を強化します」と透明性要求を明示した。また、連立与党を組む国民新党が中国や北朝鮮の軍事的脅威を指摘し、「放置すれば取り返しのつかない軍事力格差が生じることになる」と訴えた点は評価したい。
野党第一党の自民党の公約の中に安全保障や主権問題にからんで「中国」への言及がないのは残念だ。交渉中の東シナ海ガス田開発問題を念頭に「今後とも毅然(きぜん)とした姿勢で対処し、東シナ海を『真の友好の海』とすることに努めます」というだけでは、最近まで政権を担った責任政党の気概が何も伝わってこない。
問われるのは、公約通りの外交の実行力である。4月の中国艦載ヘリ異常接近の事案では、日本側の発表がワシントンでの鳩山由紀夫前首相と胡錦濤国家主席の会談後に行われた。しかも鳩山前首相は日中首脳会談でこの問題を取り上げなかった。
また、菅直人首相は先月下旬のカナダでの胡主席との会談で選挙公約に掲げた「中国軍事力の透明性」には言及しなかった。
公約実行の絶好の機会を失ったと言わざるを得ない。
【環球異見】普天間移設(産経N 22.5.17)
迷走を続ける鳩山政権と普天間問題に関して、欧米の主要紙はどう報じたのか。
参考までに産経ニュースからその概要を纏めると・・・・・・。
▼ウォールストリート・ジャーナル・アジア版(米国)
次の首相が現在の流れを覆せ
「日米安保が東アジアの安全保障の基軸になるという賛美すべきビジョンを達成することが、そもそも実現不可能だと認めるべきではないのか」
普天間移設問題で11日付の米紙、ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)は、米国家安全保障会議(NSC)の元不拡散戦略部長で米シンクタンク、外交評議会の国際問題研究員、キャロリン・レディ氏の論評を掲載。強固な日米関係の回復が望ましいとしながらも、米国は今後の推移次第で、アジア太平洋地域の安全保障に関して、韓国や豪州、インドなどとの関係強化に方針を切り替える可能性があると警告した。
第1は日本の防衛態勢の拡充。駐留米軍の重要性への理解が薄ければ「(見解は)独り善がりに陥りやすい」と述べ、安保面でのさらなる貢献を日本側が模索する必要性を指摘する。
第2は憲法9条の改正。レディ氏はこの条文が「米国や他の民主的な同盟国と日本が公平なパートナーになることを妨げている」と切り捨てる。
そして第3が、日本以外の国との関係強化をにらんだ、米国によるアジア太平洋地域の防衛構想の練り直しだ。
ただ、レディ氏は強固な日米関係が東アジア安保の理想だと主張。「誰にとっても望ましい」のは「次の日本の首相が現在の流れを覆すことだ」と述べ、鳩山首相の退陣が特効薬との考えを暗に示した。(ワシントン 犬塚陽介)
▼インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(国際紙)
まるで自民党と同じ手法だ
5日付の国際紙、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンは、米軍普天間飛行場の移設候補地とされた自治体と政権の対立が、鳩山首相の政治生命の「大きなリスク」になるとの分析記事を掲載した。
また沖縄でも、県外移設実現を強く求める自治体の首長らの意見に言及し、「(決着を約束した5月末の)期限までにまともな解決策を見いだすのはほぼ不可能」「ここまでこじれた事態を打開するには、鳩山首相が辞任するほかはない」などとする学識者らの分析を紹介している。
また記事は、鳩山首相が危機に陥った原因のひとつとして、国と地方における力関係の変化があると指摘。自民党がかつて「太っ腹な公共事業投資や地域の有力者に対する裏工作」で困難な事業を実現させてきたのに対し、鳩山首相は自らが「無駄な支出の削減や政治の透明性確保」を約束し政権を取ったことで、地方に対し国が政策を押し付けにくいと分析した。
ただ、それにもかかわらず鳩山首相は、徳之島の元有力政治家に都内で会い、支援の取り付けを試みるなど「まるで自民党と同様の手法」で移設を実現させようとしているとも指摘している。(黒川信雄)
▼フィナンシャル・タイムズ・アジア版(英国)
“手錠”が外れず苦闘するハトヤマ
5日付の英紙、フィナンシャル・タイムズ(アジア版)は、鳩山首相が沖縄県を訪問し“おわび行脚”したことについて、「“普天間の手錠”を外すのに苦闘するハトヤマ」と題する記事を掲載、「首相は地元の批判と米国の圧力にさらされている」と論評した。
同記事は、米軍基地を「最低でも県外」に移設すると主張していた首相の変節が県民から非難されている実態を詳述。その上で、「新案がいいビジネスにならない可能性もあり、政府を支持してきた地元建設業界との信頼関係も損なわれかねない」と指摘した。
また、連立政権内に代替案をめぐって一致した見解がなく、鳩山首相が「5月末決着」の“公約”をほごにしようとしていることが「民主党政権の深刻な低迷の原因」と解説している。
記事は一方、鳩山政権に対する米国側の反発にも言及しており、「長く協議した計画を鳩山首相が脇に追いやろうとすることに、米国の政府高官やアジア専門家は驚かされている」と指摘。また、「彼には別の計画もないのに、なぜ合意を見直そうとするのか分からない」とするアーミテージ元米国務副長官の不満も取り上げた。
トヨタのリコール問題が起き、中国が経済面で日本に追いつき追い越そうとする情勢の中、基地問題で日米関係がゴタゴタするのは得策ではない。記事は「(混乱は)戦略的パートナーとしての日本の名声をも傷つける」とする元米国家安全保障会議アジア上級部長、マイケル・グリーン氏の見方も紹介し、日本に問題の早期解決を促している。
ただ、米国の圧力で首相が辞任すれば米国にはマイナスとなるため、「鳩山氏に厳しい-と周りから見られることは米国も避けたい」と分析している。(黒沢潤)
10 日米安保50年―同盟の寿命― (H22.3.30)(日本経済新聞3月26-28日掲載記事抜粋)
そろわぬ対中観
2月下旬、米国防総省からキャスリーン・ヒックス国防副次官補ら二人の使
者が「4年ごとの国防戦略見直し」(QDR)を鳩山政権に説明に東京へ来た。
「これからの重点は西太平洋。日米の役割分担が課題になる」と日本の協力にも期待し、米側は日米同盟の照準をじわりと中国に合わせようとしている。中国の(軍拡)問題の深刻さを訴え、日米でもっと緊密に対中政策を話し合っていきたいと中国軍への懸念を深める米側だが、鳩山政権の対中観はしかし別の方向を向いているように見える。
周辺国も動く
鳩山首相に接した複数の関係者は「中国軍が脅威だという切迫感はあまり感じられない」と指摘する。「日中関係がよくなれば、日米、米中関係も良くなる」と首相は力説するが、これが同盟への冷たい思いにつながり、米軍普天間基地問題を迷走させる原因になっている。だが、現実には中国軍の台頭によってアジアの軍事地図は塗り変わりつつあり、中国周辺アジア諸国は不安を深め、ベトナムなどはロシアの武器の最大の買い手になっている。在アジア米軍の縮小を招きかねない鳩山政権の動きは不安の種にほかならない。
理想論にクギ
「核廃絶や先制不使用は長い目で議論していくのはいいが、今は難しい」日米で「核の傘」を中心とした抑止力をテーマにした公式会議でのロバーツ国防次官補代理の言葉だ。理想論はともかく中国やロシア、北朝鮮の核兵器に囲まれた日本の現実はそう甘くはない、というのが米側の反応だ。まして非核国の日本に最高機密が絡む核兵器の情報共有がどれだけ出来るか、同盟の柱である「核の傘」がほころびかねない危機感も募らせる。
「抑止力」を削除
鳩山首相の1月の施政方針演説案から社民党福島党首の異論で「抑止力」の文字があっさり削除された。欧州ではすでに米国の「核の傘」の不要論が噴出しているが、アジアはどうか。核武装に走る北朝鮮や中ロに隣接する日本の環境は欧州とは全く異なる。それでも核の抑止力は減らせるのか。政治が世論に迎合するとき、冷徹な安保政策も押し流され、国民がその代償を払うことになる。
「期待はずれ」
「そこまで出て行けというなら、将来、米海兵隊はグワムまで引くだろう。そうなれば、日本の防衛は難しくなる」日本の安全保障当局者は最近、米側からこう警告された。米海兵隊の幹部の一人も「同盟は維持したいが、駐留軍はいらないという発想は成り立たない」と批判する。在日米軍の部部分撤収とはいかないものの、日米同盟の見直し論がくすぶり始めている。
同盟縮小論が浮上するのは米国が超大国の余裕を失いつつあるからだ。アフガンなどで対テロ戦費が累計90兆円を超えた米国、在日米軍を見直そうという日本をどこまで守る必要があるのか。こんな議論がでるのも自然の成り行きだ。
東欧は対応早く
米国がこのまま疲弊すれば、同盟国の防衛義務を投げ出す誘惑に駆られるのではないか。その危険を日本よりずっと敏感に察知しているのが、ロシアの圧力にさらされる東欧諸国だ。ポーランドは昨年12月、米側の要請にいち早く応じ、600人のアフガン増派を決めた。1週間後ポーランドが望む「パトリオット」配備や米軍駐留に米側も応じる姿勢を示した。「我々の安全には米軍が欠かせない。その見返りを提供する覚悟はある」。日米安保条約改定から半世紀がたち、空気のような存在になった日米同盟。長年の金属疲労を取り除き、健康体を保てるのか。まさに政治の責任である。
9 日本の安全保障戦略はどうなるのか
2009年8月に「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書が出され、その直後に政権交代となり、報告書に示された「新しい日本の安全保障戦略」(第一章)、「日本の防衛のあり方」(第二章)、「安全保障に関する基本方針の見直し」(第三章)は宙に浮いたまま、3ヶ月が過ぎようとしている。この懇談会の中で出た意見の大勢は次の三点だと座長の勝俣恒久氏は述べている。
一点目は、安全保障環境の変化を受け、日米同盟を深化させつつ、日本自身の役割を明確にしていく必要があること。
二点目は、国際テロ、破綻国家など、グローバル化した新たな課題に立ち向かうためには我が国の国際協力の質と量を充実させていく必要があること。
三点目は、少子高齢化や経済の低成長といった社会の成熟や厳しい財政事情の中にあっても、我が国の防衛を支える人や産業・技術、地域社会などの基盤の維持が重要であること。
いま、我が国の安全保障について上記三点から現状を見ると、我が国の安全保障戦略や日本の防衛のあり方といった根幹的な問題が、前政権下とはいえ、10回に及ぶ懇談会を重ねて纏め上げられた報告書の期待とはかけ離れた方向に動き出している現実に危惧を感じている防衛関係者も少なくないと思う。
普天間飛行場の移転検討は平成8年に始まったと記憶するが、決まりかけていた案が振り出し議論や検証によって日本側としての混迷を深め、日米同盟の深化とは言いえない景況を露呈している。もっともこの程度で信頼関係が揺らぐような日米同盟であっては困るわけだが、東アジア共同体構想に一定の理解を示す中国の存在と相俟って、日本は安全保障戦略のなかでも根幹的な日米同盟の行方の選択を迫られている、といえよう。
我が国の国際協力のあり方にも大きな舵がきられ、インド洋における給油支援は11月9日の出港で最後となる模様だ。新政権は、アフガニスタンにおける国際貢献については自衛隊による補給支援を止めて、新たに民間主体による非軍事的な支援を模索中である。米国においても「テロとの戦い」というキャッチフレーズが消え、英国などの支援連合諸国も勝利の活路を見出せないでいる状況のなか、民間主体でアフガニスタンの安定・再建に寄与できる事項があるならば、そしてそれがアフガニスタンや支援諸国からも歓迎されるものであればそれもよいだろう。しかし、アフガニスタンにおける最大の問題はタリバンに代表されるテロ脅威である。アフガニスタンという国家を支援する外国や組織はすべて敵と見なされる状況下で、派遣される民間人の身と活動の安全を具体的にどう担保するかが成否の鍵であり、それは先の陸自のイラク派遣が示したとおりだ。国際協力の質と量の充実が問われようとするなかで、日本は新たな方向性を模索していくようであるが、テロとの戦いはなくなったわけではない。日本はこのハードルに対して先ず腹決めしない限り、言うは易く、行なうは難しの形だけの国際貢献に終わってしまうのではないかと専門家は指摘する。
座長が三つ目に揚げた、「少子高齢化や経済の低成長が我が国の防衛にどのような問題を投げかけているか」も、実はわが国防衛にとって根幹的な問題である。国会・予算委員会における議論はもっぱら国民生活にかかる手当てや保障に終始しているが、我が国の防衛を支える人や技術などの基盤的な問題も日本の安全保障、言い換えれば国民の安心・安全にとって死活的な要件である。特に日本国民のために汗を流し、血を流すことも厭わない自衛官、そしてその後継者を我が国はどう確保し、遇していくのかも真剣に考えてもらいたいものである。限られた予算の中で計画され、整備されてきた装備とそれを支える技術についてもその特性を認識しないと、合理化・効率化の論理だけでは維持発展はないし、戦う術がない。こうした我が国防衛の根幹的なヒトとモノが政権交代の新たな流れのなかで仮に見落とされるならば、自衛官OBは真にこの国を憂う。
8 安全保障と防衛力に関する懇談会(有識者懇)第10回(21年6月09日)
1 真に必要な防衛生産・技術基盤の明確化について(防衛省・説明)
2 人事教育施策の現状・課題について(内閣官房・提示)
3 これまでの主要論点に関する議論について(内閣官房・説明)
視点
有識者懇第10回目の会議は、5月29日約1時間半、総理官邸で開催され、標記について政府側から説明、意見交換がもたれた。公表された意見の概要次のとおり。
1 防衛産業・技術基盤については防衛省で選択と集中を行い、重点志向が必要。特に将来の戦闘の帰趨を決めるような部分は独自の技術を維持。また、国際共同開発への参入の制度改善が必要。
2 欧米に比し自衛隊の年齢構成が非常に高い。米国のような早期退職制度や除隊後大学入学等の還元システムが必要。
3 今回の大綱見直しは現大綱策定5年後だが、今までの見直しとどう違うのか。国際情勢の変化か、日本自身の主体性等の変化かスタンスを明確に。
4 北核実験、世界的経済危機、米国パワーの相対的低下などを踏まえての見直しである。
5 国際環境の改善、グローバルな課題等あるが日本の安全こそが国としての一番大きな目標であり、日本の安全をしっかり踏まえたうえでの貢献・活動と位置づけるべき。一方、1000人や2000人オーダーのPKOに出すことで日本の防衛が疎かになるとは思えないとし、同時に追及すべきの意見も。
6 日本の安全を考える上で日米同盟は依然として役割が大きい。日米同盟維持のためにも日本が積極的に色々なことをやらねばならない。
論点
1 防衛産業・技術基盤については従来の考え方を繰り返したもので、根底的な問題への解決模索の議論が見当たらない。国際共同開発への道筋をつける等の具体的な議論を更に期待したい。
2 年齢構成ピラミッドは任期制を削減したために生起した当然の帰結であり、米軍は任期制を大量に採用するから低いに過ぎない。わが国が多くの若者に門戸を開放し、防衛意識を高めるような狙いで除隊後大学入学等の処遇を本気で考えるならば、是非とも具体化策を論議して欲しいものだ。
3 北の核実験は過去にも行われ、経済危機は大綱改定作業を決めたあとに起きたものであり、何が見直す理由なのか国民に納得させる必要がある。
7 自衛隊の将来体制について(2)(有識者懇) 第9回(21年5月25日)
視点
有識者懇第9回目の会議は、5月15日、約1時間半、総理官邸会議室にて開催された。標記議題について防衛省による説明ののち意見交換がもたれた。公表された議論の概要は以下のとおり。
1 中国の軍事力近代化への対応は、わが国がパラレルに増強していくわけにはいかないので情報能力等特色を活かした対応を中心に考えるべき。
2 中国との協力関係を築いていくことが重要。従来の防衛交流や信頼醸成にとどまらず(海賊対策の例のような)行動面での協力も追及したらよい。
3 防衛力の役割上、有事・平時区分でなく、グレーゾーンでも自衛隊が対応可能なように法制面の整備や政府の態勢を作っていく必要がある。
4 周辺事態の対応もきちんと考えるべき。テロ・イラク特措法等の法律仕組み整備に比し、周辺事態の法整備は内輪に止まっている感がする。
5 韓国や豪州等立場や考え方が近い国との関係を準同盟関係に引き上げてはどうか。
6 自衛隊の体制とアフリカ関与はどうつながるのか。アフリカにもっと積極的に関与することで自衛隊の定員を減らす歯止めになるようなつながりがでてくるのか。
7 自衛隊の体制は現行制度前提であるが、憲法解釈のあり方や武器輸出三原則を含め、見直しが必要かどうかという議論をしていきたい。
8 北ミサイル対処で日本が得たものとして、速報体制、日米監視協力の具体化、PAC-3運用教訓(道路不慣れ等)が挙げられる。
論点
1 自衛隊の将来体制について(2)の説明は資料で見る限り、16大綱策定後の軍事情勢の変化、防衛力の見直しの必要性、と進めているが、新大綱策定にあたっては16大綱そのものの評価・分析も必要ではないのか。
2 中国の軍事力近代化、アフリカ関与、準同盟関係等尤もではあるが、周辺事態対処や日米同盟関係はもっと基本的且つ重要なお課題であり、こうした重要課題の論議、その整理にはもう少し時間を割くべきであろう。
3 次回はこれまでの論議を踏まえて全般的に整理するということであるが、防衛力の方向性について有識者がこれまで論議された成果に期待したい。
6 自衛隊の将来体制について(1)(有識者懇) 第8回(21年5月11日)
視点
有識者懇第8回目の会議は、4月24日約1時間半、総理官邸会議室にて開催された。標記2議題について防衛省、財務省による説明ののち意見交換がもたれた。公表された主な議論としては以下のとおり。
1 防衛力の将来像が考え方の整理までしか言及していないので、具体的な将来像についてもこれからきっちり議論をすべき。
2 北朝鮮ミサイル発射もあり、ミサイル防衛のあり方を具体的に議論すべき。
3 防衛力の将来態勢についてはその優先順位をつけるべき。
4 財政事情や少子化等の制約条件の一方で我が国の安全保障環境の悪化も事実であり、バランスよく将来体制を考えるべき。
5 防衛力の将来体制は日米同盟を基礎に考えるべき。日米の役割分担で日本がより進んだ危機管理能力を持つ場合、策源地攻撃能力も日米同盟をより実効的なものにするかどうかの文脈で議論すべき。
6 ホストネーション・サポートは財政上の負担が大きいが日米関係の象徴といった面、外交的な意味も考慮すべき。また、日本に駐留経験ある米軍人が退役して日本に好感をもつ側面も考慮すべき。
7 韓国や台湾と比較し、装備品の自国生産比率が高いとすることに対し、日本の生産技術の証左であり、輸入すればよいとの意見には否定意見。
8 装備品取得の効率化と武器輸出3原則に関し、F-35の例で国際ネットワーク形成の重要性と日本の参加を指向すべきとの意見。
論点
1 「自衛隊の将来体制について」の説明で戦略環境分析に目先の変化や短期的視点での捉え方が目立つが、これをもって大綱策定に資するのだろうか。それから先の時代趨勢も考えてのことであろうか。
2 我が国の特性・課題について、「国民の防衛意識や気概」といった肝心の視点が見られないのは疑問に感じるところである。
3 財務省は「日本の財政と防衛力の整備」で30頁の資料を準備、「今大綱は過去と比較し、財政・経済状況とも著しく悪い」と釘を刺している。そうした状況を先読みした「16大綱からの帳尻合わせの策定作業」とならぬよう、血税を生かす真剣な論議に注目したい。
5 「防衛を支える基盤ー自衛隊の基地等と地方自治体(有識者懇)第7回(21年4月17日)
視点
有識者懇第7回は4月9日午後、約1時間半総理官邸内で開催され、標記について防衛省の説明、蒲谷横須賀市長、山口千歳市長からの意見聴取があった。委員の意見交換の主だった議論は
1 自衛隊の規模について
(1) 財政事情が厳しいため効率化は必要だが、どこかに限界がある。その議論が必要。
(2) 防衛分野に関する機能やアセットは、一端閉じると再回復は困難であることを十分考慮すべき。
(3) 予備自衛官などの予備勢力の活用方向も併せて考えていく必要。
2 自衛隊の配置のあり方について
(1) 冷戦後、西方重視、北から西へシフト。この傾向は続くのか一段落か、有識者懇でも考えるべき課題
(2) 部隊の機動性重視の時代趨勢だが自衛隊の主眼が国土防衛なら配置の均衡をあまり崩すわけにはいかないのでは。
3 地元への施策について
(1) 縦割り行政の一本化を考えるべき。地元企業の参画の工夫を。
4 財政事情や少子化等の制約条件の一方で我が国の安全保障環境の悪化も事実であり、バランスよく将来体制を考えるべき。
(1) イラク派遣時、隊員、留守家族等への地元の果たした役割は大。
自衛隊と地元との関係、自衛隊にとっての地元の意義を評価すべき。
(2) 過疎化、少子高齢化が進む地方にとって自衛隊は地域の社会的機能を維持するうえでも様々な役割が期待され、考慮すべき。
(3) 地域経済、社会の活性化の観点から実際に隊員、家族の定住が重要
論点
1 所要防衛力と財政事情、効率化と財政事情の議論は「防衛任務の達成」という目標を前提にしないと、「限界まで減らせ」になり、防衛力の本質を失ってしまうのではないか。
2 そもそも小さな島国国家であり、自衛のための所要防衛力も削減されているのが実態であり、シフト論議には限界があろう。
3 自衛隊の本来任務は国土防衛であり、再配置や統合は地域との関係を破壊するだけでなく無形の防衛力たる国民の理解や部隊の伝統を破壊することも認識した議論をして欲しい。
4 「防衛生産・技術基盤」について(有識者懇) 第6回(21年4月7日)
視点
有識者懇第6回目の会議は3月26日午後、約1時間半、総理官邸会議室において開催され、標記議題について防衛省、経済産業省側から説明があり、爾後、佃防衛生産委員会委員長、野間口日本防衛装備工業会会長から意見を伺った。主だった議論としては
1 装備、特に正面装備に当てる予算が年々減少するなかで、日本の防衛産業の生産・技術基盤が弱くなっているとの認識とその対応について
(1) 厳しい予算環境下での防衛産業基盤の維持には選択と集中が必要
(2) 具体的には自衛隊のニーズ、メーカーの対応の両面から基本的方向性を報告書に盛り込めるよう作業すべき
2 武器輸出3原則については、
(1) 欧米での装備品の国際共同開発に参加できるよう見直しを
(2) 3原則の緩和といっても何をどこに売るのか具体的なイメージもはっきりしないため、まず世論の理解、支持を得られる議論が必要
3 調達コスト、ライフサイクル・コストの低減について防衛省改革会議報告書でIPT(組織横断的なプロジェクト・チーム)の活用が提起されたが、 今回、PBL(パフォーマンス・ベイスド・ロジスティクス)という手法を紹介(契約企業がある一定期間、一定のパフォーマンスの維持に責任を持つという契約の仕方)し、防衛装備に適用可能か検討が必要とした。
4 国として防衛政策を柱とする産業・技術基盤に関する方針を立てるべきとしているが、新しく出来る大綱の別表と防衛産業基盤のあり方が上手く連接するよう議論が必要
論点
1 装備、特に正面装備に当てる予算が年々減少していることが問題の本質になるのだが、シアリング論に走り、生産・技術基盤が弱くなっていることの重大性(国家のリスク)の議論がないが如何?。
2 このために如何に装備に充当する予算を確保するかの議論が出てこないのも問題。防衛産業のためにシアリングを考えるのではなく、国家の防衛基盤の喪失を防ぎ、解決の英知を生む論議が欲しい。
3 装備品の国際共同開発は最早時代の趨勢であり、技術立国の日本は防衛力という観点からの防衛産業の国際化へのガイダンス作りの議論が必要ではないのか。PBLは功罪あるも既に米国では実施中
3 日米同盟に関する諸問題他(有識者懇)第5回(21年3月11日)
視点
有識者懇第5回目の会議は3月3日約1時間半、総理官邸会議室にて開催された。標記の2議題について説明ののち意見交換がもたれた。
日米同盟に関しては、
1 米軍再編以外でも、情報分野等における日米協力の進め方、課題を考慮すべき
2 同盟重視とともにアジア地域におけるマルチの仕組みの位置づけも視野に
3 日米同盟が絶対的に不可欠なものでなくなっているということも危険性として認識すべき
4 「米国の核抑止力に依存する」、というシンプルな表現の核抑止力のあり方について、米国としっかり議論すべき
5 日米の役割分担のなかで米軍に一方的に依存していた部分でも自衛隊が果たすべきことがあるのではないか
といった極めて重要な課題について、意見が交わされた。国際平和協力法に基づく活動については「なぜ、近年、実績が伸びないのか」という疑問があり、その理由に、PKOの5原則、隊員の安全確保、国益とのつながりといった要因が挙げられた。
論点
1 「日米同盟が絶対的に不可欠のものでなくなっている」というのは
危惧としてだろうが、少なくとも軍事的には我が国は核抑止、アジア太平洋地域の安定、我が国に対する侵攻対処等、米国に依存しているのが現実の実態であり、日米両軍の根本的な相違を認識の上での「自衛隊が依存していた役割の一部を果たす」ような議論であろうか。
2 国際平和協力法に基づく活動の実績が論議されているが、この背景には「日本の派遣人員が列国等に比し少ない。増員すべきだ。」といった政策提言が当メンバーから出された経緯もある。
海外への派遣のたびに賛否や根拠法制定で揉めるのは我が国の実態から避けて通れない環境であるが、見方を変えれば、いつまで追随型の貢献をするのか、日本自身の考えによる新たな日本らしい国際貢献はないのか、という議論も欲しいものだ。
2 官邸の意思決定システム(有識者懇第4回)について(21年3月4日)
視点
有識者懇第4回目の会議が2月24日約1時間半、総理官邸会議室にて開催された。当初、「日米同盟に関する諸問題」を議題に予定していたが、「情報と意思決定」に変更し、官邸の意思決定のシステムに関する意見が交わされた。政府は近年の情報集約の改善策として、「情報分析官」を設置し、「情報評価書」を纏め、政府サイドに提出している。また、NSC(国家安全保障会議)のような仕組みの必要性や情報を収集・分析する「情報コミュニティ」、各省庁から官邸への情報を上げる基準等について意見交換した模様である。(自衛隊OB野窓「防衛ニュース」参照)
特に「官邸の意思決定のシステム」については、どのような仕組みが必要なのか、過去、NSC検討論議も座礁した形になっており、時間的、陣容上からどこまで意見集約が進むのか注目したい。
「情報コミュニティ」については、日本政府の場合は(実際的な人的規模が)5,000人くらいと見積もられ、10万人規模とも言われる米国に比し、少ないのではないかという意見があった。また、日本は特に「ヒューミント」の分野が遅れており、資源投資や人材育成を政府部内で省庁横断的に考える必要性の意見があった。
論点
1 情報機能は一般的には情報のサイクルである「指向・収集・処理・使用」の各機能から構成され、通常、その組織の状況判断や意思決定のために必要な分野について自らの情報機能を保有することが必要と考えられるが、「総理官邸」或いは「日本政府」と、米国のような「大統領」という権力集中機能の意思決定に資する米NSCとは、そのあり方が異なるのではないだろうか。
2 同様に、「情報コミュニティの規模」については必ずしも米国のような規模を比肩した論議には限界があるように思われる。我が国が世界戦略を持ち、世界の警察官を志向するなら別であるが、「総理官邸」或いは総理が蓋然性のある諸事象のなかで、主管省庁の判断では処理できないような対象事態について実態的な検討をしないと、「官邸の意思決定のシステム」が見えてこないのではないだろうか。情報本部などの実態経験のある専門家の意見が聞きたいものである
1 「安全保障と防衛力に関する懇談会」(有識者懇)の役割は重い(21年3月1日)
視点
本年度末までに予定されている「防衛計画の大綱の見直し」に関する作業に資するため、いま、官邸主宰で「安全保障と防衛力に関する懇談会」が月2回を基準に開催され、意見が交わされている。すでに3回目が終わったが、第2回では金融危機による影響、オバマ新政権の政策トレンド等について、第3回では日本の安全保障・外交課題、核軍縮等についてそれぞれ意見が交わされた。なかでも第3回目には昭和32年に作られた「国防の基本方針」について「国連が有効に機能するまでは日米安保を基調とする」考え方が上げられ、「それが「必ずしも現状とは合っていない」また、「国力国情に応じて防衛力を漸進的に整備する」と書かれているが、これは防衛力を経済状況に合わせて増やしていく時代の話。「国力国情に応じ」は非常に柔軟で今後も有効に見えるとの意見もあるが、日米安保を基調とするということとの関連でも、我が国の防衛力が経済的に無理せず少しずつ増えれば良いというだけでなく、もっと役割・位置づけを明確にした、国としての基本方針がなければならないのではないか。」といった意見があった。
論点
1 昭和32年に作られた「国防の基本方針」における「国連が有効に機能するまでは日米安保を基調とする」はどう整理するのか。
1945年に創設された国連への期待を念頭に置きながら50年以上が過ぎ、この間、在日米軍基地問題や経費負担などを抱えながらも日米同盟というまでに進化してきた事実をどのように整理し、また今後、日米安保をどう位置づけるのか、重大な政策判断である。
2 「国力国情に応じて防衛力を漸進的に整備する」としてきたが、これは「防衛力を経済状況に合わせて増やしていく時代の話」であり、これからの時代は「もっと(防衛力の)役割・位置づけを明確にした国としての基本方針が必要」というのは尤もな意見である。
3 これに対し、「全体の関連が非常に重要であり、防衛力だけ、或いは日米同盟の課題だけを切り離した議論では良い答えが出ないので相互の関連性を踏まえて結論を」としているが、それでいいのか。
4 以上のような論議は懇談会の中のごく一部の内容ではあるが、非常に重要な論点であり、有識者の方々には「陸海空防衛力の位置づけ・役割を明確にしたうえでの実際的な論議」を期待
